体験レッスンの問い合わせが10件あるとしたら、その三割は発達障害(グレーゾーンを含む)をお持ちのお子様の体験レッスンだったということがよくあります。
 他の教室さんでは断られてしまったり、受け入れをしている所を探されてHITしたり、口コミから選ばれたりと様々です。
 当教室では発達障害の方も受け入れていますが、体験レッスンのお問合せを頂く際は、どういった特性があるかわかる範囲で構いませんので申し込み時にご記入頂くと助かります。

 このカテゴリーを作るかどうかは迷ったのですが、やはり年々の問い合わせ増加と、子育てに悩む方、また同じピアノ講師で発達障害の子を受け持って戸惑っている方に向けて、私の拙い経験から何かためになる話が出来ればと作りました。
 今回は「発達障害でも音楽レッスンは出来るのか?」について書きたいと思います。

 発達障害と言われている症状は、DSM-5では精神疾患が22のカテゴリーに分けられ、「神経発達症群」の大分類の下に「自閉スペクトラム症」「注意欠如・多動症(ADHD)」「知的能力障害群」「局限性学習症」「運動障害群」「他の神経発達症群」と7つに分かれているものから単数または複数併せ持つ症状があると、医療機関などで検査し「発達障害」と診断されます。

 発達障害と、グレーゾーンは大きく分けて日常生活で支援が必要か、自立生活が出来るかで、常に要支援が必要とされる状態なら障害認定されやすく、自立生活が出来る状態だとグレーゾーンとみなされるようです。

 人間、ある程度は得意・不得意がありますし、言ってしまえばみんなグレーゾーンでも良いのですが、衝動性が強い・こだわりがある・努力では改善出来ない問題が学校・家庭・職場などの環境で弊害を起こすことが一般の人より多いと、「あれ?」と疑って大人になってから発達検査を受けるということも少なくありません。

 実際に、私の夫も結婚して5年目に疑いが出てきて不注意優勢型のADHDグレーゾーンでした。黒としっかり診断がつかないのは、家庭ではダメダメですが「職場」では何とか立ち回っていたりするからです。これが「職場」や「サークル」などでも問題が起きるようでしたら、完全に黒になります。

 子どものうちは特に支援が必要なことが多いので、昨今では認定済みではないグレーゾーンでも自治体の判断などで療育を受ける機会を設けることが増え、発達障害への理解というのも周知されるようにはなっています。……が、残念ながら当事者・当事者の保護者・家族には発達障害を受け入れたり、どうしても特性を理解できる人と、理解できない人と分かれてしまいます。
 私自身も、夫がADHDの症状があるから仕方ないと言い聞かせていますが、生活していると、どうしても我慢が出来ないんです。不注意と物忘れがあまりにも多くて、改善する努力も見られず、本人が開き直って生活しているので、私の方がすっかりカサンドラ症候群に陥ってしまいました。
 子どもなら仕方ないと思える不注意と物忘れでも、大人では改善の機会が与えられないままアダルトチルドレンと化しているのが原因だと思っています。

 そのようなことから、個人的には早い時期から発達障害は療育とサポート、そして本人自身が特性を理解して変わることが大事だと思っています。
 そのためにも音楽レッスンは有効な療育手段でもあります。
 音楽療法という専門の方もいらっしゃいますが、どちらかというと心のケアが中心になっているため、私の中では「発達支援のための音楽教育」という位置づけがしっくりきています。
 前にも書いたことはありますが、個人差があるので「音楽」に全く興味がないのに無理にやらせたりすることはよくないし、家庭環境によっては楽器を置けないなど難しい場合もある。
 だから全ての発達障碍者にとって音楽レッスンが絶対良いというわけれはなく、アプローチの一つとしてアリではないかと思っています。

 では、実際にレッスンとなると、どのように進めているのか。そもそもお教室を探すところから問題が山積みです。

 多くの発達障害を持つお子様の場合、親の指示も通りにくい状況で、「言うことを聞いてくれない」「喋らない(意味のある発語がない。または発音が不明瞭)」「空気を読まない」「座ってじっとしていられない」「何でも目につくと触りたがる」「人見知り・場所見知りが激しく泣く」「順番やルールが守れない」といった問題行動が見られます。
 このことから、一般のピアノ教室では講師から「座って話を聞いたり、指示に従えない子は無理」「他の生徒さんの迷惑になる」「教室の楽器・備品を壊されるのが困る」といった理由で、レッスンを断られるケースが多々あります。
 特に大手の音楽教室ではグループレッスンで乳幼児期スタートするので、グループの輪を乱してしまって辞めることになったり、講師の目が行き届かず放置される子もあります。
 これは講師に発達障害の知識がなく、対応の仕方がわからないため、残念ですが講師の力不足・勉強不足と思って生徒保護者の方は諦めて新しい縁を探しましょう。

 発達障害の知識がある講師を探すには、体験レッスンのお問合せの時期から、お子様の情報を隠さずに話して頂くのが近道です。講師の間でも交流があったりしますので「この先生なら教えているよ」と情報を聴くことができます。
 また、グレーゾーンと健常者の間を行ったり来たりしているような、発達不安がある場合も、出来るだけ障害知識をお持ちの講師を探す方が良いです。うちの生徒さんでもグレーゾーンの子は健常児と同じテキストを使って進める場合もあれば、「あれ? ちょっと難しいかな?」と思えば、発達段階に合わせたテキストに変えたり、指導の仕方に発達支援の手法を取り入れることもあります。
 一人ひとりに合わせた指導をするのが現代講師には求められているスキルですので、昔の十把一絡げに指導をするといった教育では子供たちは伸びません。
 そのため指導者の選び方は保護者と子ども自身がしっかり見極めて、相性の合う先生を見つけることが重要だと思います。

 レッスンを開始してから、やはり辞める生徒さんも少なくありません。これは健常者であっても、30人入ったら1年以内に1~2人程度は辞める選択をする方がいます。
 中でも「レッスンに行きたくない」という理由で辞める場合は、注意が必要です。
 行きたくない事情が「保護者が習わせたいから通ったけど、本人はやる気がない」や、「家での練習が苦痛」や、「他の習い事がしたい」など音楽レッスンとは別のベクトルに生徒自身が向いている場合、残念ですが無理にレッスンを続けるよりも、またやりたいと思える日が来るまでそっとしておくのが良いと思います。
 もちろん、講師がレッスンを好きにさせてあげられなかったというスキル不足もあるかもしれませんが、本人が苦手なことを強制的にやらされる状態で、音楽レッスンを続けるには全員に忍耐力が必要になります。
 本人が習い始めたいと希望を持って通ったのに「辞めたい」という場合なら、忍耐力で強制的に辞めずに行くことに意味があります。諦める選択ではなく粘り強く根気を育てる意味合いでありです。「あー、あの時習い続けて良かったのかな」と思う経験というのは、今後の何十年後かの未来に感じることですから、過去の苦痛が糧になることも成長の中で大事だったと言えます。が、発達障害の生徒さんの場合、自分から「音楽レッスンをしたい」と希望する子は少ないです。ですので、辞める判断も親が支援する必要があります。

 発達支援のための資格は多数ありますが、音楽と結びついて学んでいる人はとても少ないです。
 このブログカテゴリーでは、講師向けにも「発達支援のための音楽教育」も紹介していこうと思います。
 このブログを通して、発達支援が出来る音楽教室さんが増えることを祈っています。