皆さんが思うピアノの先生のイメージって、意外と「感情的」「偏屈」「几帳面」「洋服がお嬢様っぽい」「お金持ち」という固定概念のようなものを想像されているようです。

 30年くらい前ならピアノという楽器を置ける家が裕福な家が多かったり、良家の子女が嗜みで習う楽器だったりで漫画や何かの知識でイメージがついているようなのですが、一般的に音楽大学を卒業してピアノの先生になっている人は確かにバックが裕福なのは今も昔も変わりません。

 音楽大学はめちゃめちゃお金がかかります。かけてきた練習量と学費に見合う分の収入が卒業後に待っているわけでもないのに、何故こんなに高額なのかと思う。

 それと芸術系大学のあるあるなのか、先生毎に派閥があって、大学教授先生の門下生であることが入学試験には有利に働くため、そういう派閥に所属やツテがない生徒が入試を受ける場合、演奏技術という実力だけで入れるかはかなり怪しいものです。大学も商売だから仕方ないのかなとか、先生がたも名誉や功績が欲しいのかなと……思ったりもします。

 音楽大学狙いたい人は大手の音楽教室が主催しているグレードテストは勿論、各種コンクール、コンテストで成績を収めるのはもちろん、普段の学力テストも相当大事になってきます。
 そんな厳しい世界ではありますが、グレードテストのお陰で、何のツテもない私はのほほんと音楽短期大学を推薦入試でパスした経歴を持ちながら、講師養成学校に通いました。

 ちなみにピアノも持ってない状態だった田舎のド貧乏人ですから、経済的にかなり厳しく学費を卒業後に会社に返す奨学金に似た契約で学校に通っていました。
 周囲の同級生たちは、やはり裕福な家庭が多くて住む世界が違うなと思いましたし、卒業後に働きながらも先輩・後輩の先生たちが身に着けるブランド品や、話している世間話、乗っている車など……もう比較したらあかんなと思うくらい、だいぶ住む世界違いました。


 ピアノの販売協力という名の強制的なノルマを課せられた時に、「こんなに生徒いて1件も同伴なし?今から営業電話かけて」とトップの先生に言われたことがあり、泣きながら生徒に無理やり販促電話を事務所からかけたことがあり、今でもその生徒ご家族に申し訳ない気持ちがあるし、言い返せなかった自分を責めています。今思っても完全にパワハラです。
 当時の自分も電子ピアノしか持っていなかったし、高価なピアノを自分が買えないのに何故生徒に勧めないといけないのか、電子ピアノであっても努力次第で講師になったものだから楽器の買い替えには相当悩んでいました。
 でもね、周りの先生たちは売れる人に片っ端から電話かけて売る強メンタルな人ばかりで、無理な生徒は切り捨てて、次々とか……トップの先生に「無理」と言っちゃえるぐらい、ある意味自分勝手にできちゃう性格の人が多かったんですね。
 私は今も昔も、生徒に寄り添った形で指導したいから、本当に会社側の考え方とか、周りと合わせるとか、女社会のゴタゴタとかに疲れちゃって……ついに壊れちゃったんですね、ハイ。

 26歳ぐらいの時、自宅の階段の上から一気に下まで頭から落下。ドーンッと一撃で柱に頭をぶつけて、8針ほど縫い、強い脳震盪で2日入院して1ヶ月の休職を言い渡されました。
 が、パワハラ会社は休職されても変わりの先生が居ないからと、結果休職扱いに出来ない教室は脳震盪で頭に包帯巻いたままレッスンに通うことになり、翌年の二月に……仮面うつ病になってしまいました。

 うつ病の理解は当時自分の親にもなく大喧嘩の末、無理やり結婚に逃げて実家を出ることになり、会社も辞めたいと申し出て……結果、大正琴教室だけはどうしても後任の先生が居ないからと、今も教室に通っておりますが、事務所所属のピアノの講師生活は終わりました。
 その後に家を建てて、現在の竹成音楽教室を開講して自分が思うピアノの先生を作り上げています。
 紆余曲折あったけど、住む世界が違うと考え方も違うし、演奏の実力だけでは生きていけない闇の世界を垣間見ました。

 竹成音楽教室ってどんなん?

 と、思われて体験レッスンに来てもらう方は吃驚するぐらい、「普通の家にグランドピアノとドラムと電子オルガンが置いてある所だよ」と口コミで広まっているようです(笑)
 本当に家も小さいし、全然豪華でもなんでもないです。
 何ならピアノよりか、畑に力入れてないかい? ってぐらい、年中九条ネギが植えてあって、玉ねぎが吊るしてあるし、夏野菜採り放題、サツマイモの葉っぱ邪魔だぞーって言いたい。
 どれだけ音を出しても、隣がダイワハウスの資材置き場だから重機が出入りして、向こうもガーガー言ってるから騒音を気にせず弾ける。
 気軽にピアノやってみたい人には通いやすい空間。

 昔のピアノの先生イメージからはだいぶ程遠いところかなと思っています。
 よく習い事の先生にはお心づけが必要か、中元・歳暮はどうするか、格式高い所だったらどうしようかと不安になる方も居ますが、もう時代が時代なので一切必要ありません。
 私が目指しているのは気軽に音楽を楽しめる空間・場の共有。
 昔ながらの古い体質のピアノ教室・ピアノ講師にはなりたくないと思っています。