発達障害に関わらず、レッスンにやる気があるとき、ない時と人間には気分で差があります。

 特に今の梅雨の季節は、天気に左右されて何となくやる気がダウンすることも珍しくありません。
 今日はこの曲が課題になってるけど、やりたくないなぁ……こっちの曲の方が楽しそうだなとなれば、レッスンで違う曲を弾いても、竹成音楽教室ではOK。

 むしろ、大体の子どもたちは大好きで弾けるようになった「猫ふんじゃった」を早弾きしてみたり、前回合格した曲を何度も何度も弾いていたりします。
 講師も余裕がある時は一緒に伴奏したり、楽器で応援したり、じっくり聞いてみたりします。
 よく家で弾いていると親御さんは「そればっかり弾いてないで、課題の曲練習しなさい」なーんて声をかけちゃうと思いますが、弾けるようになった曲を得意げに何度も弾くのは、自己肯定感を高めるとともに、指練習にもなっているので無駄ではないんですよね。

 それはピアノの練習ばかりでなく、普段の生活の中でも同じことが言えます。
 大好きなお絵描きで、何度も同じ絵を描いては消してを繰り返したりしていると、絵のクオリティが上がっていたり、もっと上手に描きたくて、じっと観察する癖がつきますし、手指の細かい操作もだんだんと上手になります。
 先日は、ある生徒さんに塗り絵課題を出していたら、線を沢山描くことにハマり、そのあと地図を描くことにハマって何度も描いていると聞きました。
 一度通った道順や、建物で何があったかを覚えていないと地図を描く事は出来ないので、頭の中で想像して思い返して描くというアウトプットをこなしています。
 その生徒さんはお話しする発音がうまく出来ずコミュニケーションを取りづらい状態でしたが、地図を描くことを通してアウトプットが出来るようになると、コミュニケーションを取る手段になるので、この先がどうなるかとても楽しみです。

 ADHDがある子は衝動性により、行動のアウトプットが非常に高く、レッスン室から勝手に出ていったり、触ってほしくないものを触ったり、弾いてほしい曲を弾かないことは日常茶飯事です。
 これでどうやってレッスンしているの? と疑問に思うかもしれませんが。
 生徒によって、やる気が向くスイッチを押す声掛けを模索します。
 やりたくない事や、少し難しい事、今までと違う事をする事は、発達障害者にとってかなりのストレスにもなり、パニックを起こす場合や癇癪を起こすことも少なくありません。
 さじ加減が難しいのですが、ステップアップする時は時間をかけて「見本→真似してね→見本→一緒にしよう→見本→実践」のように健常者が1回のレッスンで出来ることも3回、4回と繰り返して指導することが必要になります。
 そのため、家で練習する時は親御さんの忍耐力が試されます。
 特にADHDの子は反復練習が苦手ですので、出来た回数が見える化して、目標値を積み上げるなど工夫が必要です。ご褒美制度をとることもありますが、ご褒美目的に練習を適当にしたり誤魔化したりすることもあるので、取り組みが真面目に出来る子はご褒美ありをおススメします。

 昔のピアノレッスンは厳しい先生も多く、先生のご機嫌伺いながら……というのも少なくありませんが、現代のピアノ講師は指導するテキストや指導方法も研修を受けている熱心な先生だと、生徒に寄り添ったレッスンをする事が多くなってきました。
 とはいえ、中には昔ながらの古い指導に徹した先生や、技術そっちのけでお金儲けでやっている先生もいらっしゃいます。どんなテキストを使っていて、どんな指導だったかというのは生徒さんが持っているテキストの中に現れているので、引き継ぐ講師には講師の質が読み取れます。
 ピアノという習い事は基本的に家での練習がほとんどで、本人の努力や意欲に左右されます。
 レッスンの中では短い時間で練習方法をお伝えするとともに、やる気が下がったモチベーションを回復させたり、継続するための力をサポートフォローがほとんどで、新しいステップアップは一つだけに絞ったりしています。
 一週間の中でそう何個も技術を習得することは出来ないので、やる気があるときは練習も多めに、やる気がない時は少なめになっても構いません。レッスンもやる気が最初なかったけど、やり始めたらなんだか出来る気がして「もう一回弾く」と生徒から言い出すこともあります。
 やる気ないレッスンが続いてしまうのは問題ですが、やる気が出なくても先生に会いに来たら気分が変わることもあるので、顔を出してくださいね。

 うちの教室では「今日はやる気ない」「練習全然できてない」と自己申告してくれる生徒さんも多く、そんな時は私はその子のやる気スイッチを探そうとレッスンに気合が入ります(笑)
 こんなこと言うと「叱られるかな?」とか黙っていても、練習してない週は見破りますし、言ってもらった方が、曲が難しくてやる気がないのか、気分的な問題なのかで対応方法も変わります。