春や秋から始めた人も多いと思いますが、早速始めたのに「辞めたい」と言い出した。なんてことがあったりします。どの習い事でもあります。

 憧れて習い始めるのだけど、やってみたら「意外と面倒くさい」「練習が出来ない」「楽器がない」「弾くための姿勢や指の形をとやかく言われる」「ソルフェージュで文字を書いたり覚えたりしないといけない」「すぐ弾けない!」色々な壁にぶつかります。

 そうです、習い事にすると基本的には「楽しい」ことばかりではありません。どちらかといえば、練習をコツコツする事や新しい言語を覚えるのと同じなので、激ムズの領域です。
 音を出すことは簡単ですが、出した音への表現力や技術力を学ぶのがレッスンです。講師から指導・評価されますし、レッスンではダメ出しされる事の繰り返しです。
 個人的には、ダメ出しに耐えられなかったり、練習が面倒くさかったり、ドレミやリズムを覚える気が一切なかったりするなら、レッスンで学ぶよりも「個人で楽しむ」だけに留めておいたら良いのではないかと思います。

 今年も入会希望の方から多数のお問合せを頂きましたが、問い合わせの段階でお断りした方も数名いらっしゃいます。
 ドレミを覚えずにピアノを弾ける耳コピの天才みたいな人は稀に居ますが、そういう人って意外とレッスンを受けずに勝手に個人で楽しんで能力を伸ばした形の人が多いと思います。TVタレントのみやぞんさんが、そのような話をしていたと記憶しています。
 耳コピーで自分で自由に楽しんでいるのに、レッスンであれこれ指導されると「面白くない」「つまらない」「自由に弾きたい曲を弾けない」ということが多々あります。
 もちろん、そういったレッスンをうまーく指導してくれる先生も居るとは思います。
 残念ながら、私にはそのような指導は出来ないです……。

 私の得意分野は実はピアノではありません。
 専攻楽器は電子オルガンですし、学んできた中で良く出来た科目は「ソルフェージュ(楽典)」「和声」「編曲」です。講師として働き始めてからは「大正琴」「ピアノ」「アンサンブル(編曲)」を主に指導するようになり、発達がグレーゾーンの子と接する機会が増えて、「児童発達支援士」「発達障害コミュニケーションサポーター」「SSTスペシャリスト」の資格を取り、日々勉強しています。

 ピアノを弾きたいと思っても、練習が苦しいとやりたくなかったり、難しいと諦めたり、他に興味が向いたら辞めたくなる気持ちは必ずやってきます。子どもなら尚更のことです。
 スパっと辞める決断をするのも良いと思っています。ダラダラやっていて嫌な気持ちになるより良いと思います。また、楽器と環境があれば、いつでも何歳からでも学べる習い事です。
 プロになりたいとか、その道で仕事をしたいという事でなく趣味の範囲なら、いつでもできます。
 習い始めて「こんなはずではなかった」という経験も大切だと思いますし、この教室より別の教室の方が良いと思うこともあります。

 個人的な思いとしては、ピアノレッスンで培われる「コツコツ努力したら実る」「出来なかったことが出来た達成感」「小さな変化に気づく」こういったことが少しでも理解出来て、次のステップに繋がれば良いかなと思います。

 子どもは親の分身でもなければ、親が出来なかったことを投影するキャラクターではありません。
 子どもが少し鍵盤を触って楽しんでいたら「この子ピアノが好きに違いない」「弾こうとするなんて、うちの子天才」「やらせてみたら変わるかも!」という親の衝動的な思いには「ちょっと待ってね」と必ず体験レッスン受付時のメールで苦言を呈しています。
 子ども自身が「習いたい」「やりたい」というまで待っても遅くはないのです。
 もちろん、コンクールやピアニストにさせたいとなると、早期から教育が必要かもしれませんが、そんな凄いお子様を育てたい方は、やはりピアニストの先生に弟子入りするでしょうからね。