乳幼児って音楽をどう捉えているのだろうか。息子を持ってから特に考えさせられるが、子どもの音楽の原点って母親の胎内から聞こえる音なんだなぁと改めて思う。
 胎教に良いとされるモーツァルトのピアノ曲を聞かせたりする人もいれば、産後寝ない赤ちゃんに子守唄やオルゴール曲を聞かせたり、メリーには童謡の曲が入っていたりと、身近に音楽がある環境です。
 よく、音楽教室で話を聞くのは「音楽を流すと笑ったり、リズムを取ったり、ピアノおもちゃの絵本をよく触ってて、うちの子はもしかしたら才能があるのかも?」というパパママのほんわかエピソード。
 結論からすれば、赤ちゃんはみんな音楽が大好きです。
 音楽に限らず、聞こえてくる自然の音、歌は人間が育つにあたって大事な感覚です。耳が聞こえにくい赤ちゃんでも、音は空気に触れ振動として伝わります。
 そして、大好きなパパとママと一緒に聞く音は、とても安心します。
「先生はお子さんにピアノ教えないんですか?」と聞かれます。
 私はよく「本人が希望すればね~」と返していますが、音楽はいつも身近にあるものとして息子は接しているので、育児の一つの方法として0~2歳児と音楽の関わり方をご紹介したいと思います。

 0歳0か月~3か月(首すわり時期まで)
 産後1週間で母子共に退院し、自宅でほぼ息子と一緒に寝ていました。実は会陰切開縫合手術後に血腫になり激痛で全治1ヶ月ほど続き、ロキソニンを毎日服用していました。痛み止めが切れると激痛で寝ても起きても痛いという……地獄に似た苦しみ。
 そのため一切ピアノには触らず、息子の寝かしつけもトントンと叩いたり、部屋は真っ暗にして朝日と共に起きる生活を1ヶ月続けたところ、息子は生後1ヶ月で昼夜の判別がついて、夜は21時までに絶対寝るようになりました。
 1ヶ月半後にピアノのレッスンを始めたので少しずつ音楽に触れ、目で追視できるころにメリーで童謡をメドレーにして聴かせて、歌っていました。
 レッスンは大体決まった時間にあるので、生活リズムと共に決まった時間に音楽がある状態です。生徒の発表会のため母子室で演奏会を聴いていました。
 生まれてすぐ音楽を聞かせるよりも、胎内に近い環境音を聴かせていたことがポイントかなと思います。徐々に外の世界へ目を向けられるようになるのと同時に、音楽を聴かせた形になります。

 0歳4か月~8か月(腰すわり時期まで)
 小物楽器の音や、メリーの童謡、生活音に興味を向けるようになり、擬音語を取り入れました。クーイングから喃語が「えうー」「うんて」「たいたいたい」「てってってって」と発声していて、この時点であまり他の赤ちゃんと発声が違うなということに気づく。幼児語は教えず、あくまでも大人と同じ言語で話すことにする。
 ピアノレッスンをしていると、同じ曲が聞こえてきたり、一定のテンポ感がわかるようになり、ピアノ演奏で躓くと不機嫌になる息子。私より先生をしている感じ。
 手遊び歌を多く取り入れて手だけではなく、足も使う。
 友人から「うん、たん、うん、たん」とかピアノレッスンで言ってるから喃語が「うんて」なんじゃない?という目から鱗な情報により、真似をしているのかなと思う。
 このころは、同じ曲・同じ歌をしていて、生活リズムも同じをとにかく意識していました。黄昏泣きも息子は酷かったので、昼寝も15分と短かったり、ぐずり出しも半端ない時期でしたが、今思えば離乳食が始まりお腹空くことが多かったのかなと思ったりする。

0歳9か月~1歳5か月(歩き出すまで)
 ピアノの椅子に座って、実際に鍵盤を弾いてみたりする息子。私が演奏しているのを見ていたせいか、手元や指先を立ててピアノを弾こうとしている。
 多少の音が違ったりする非和声音を聴き分けて、音があっているときは機嫌よく体を揺らすが、音が間違っていると首を傾げられる。
 レッスンでいつも使っている曲がわかるので、聞こえると踊る。メリーの童謡やおもちゃピアノの本は、自分の好きな曲を選曲するようになり、気分によって聞きたい曲を変えるなどする。
 時にはメリー、ドラム、ピアノの曲を3つ同時に鳴らして絵本を読んだりBGMとして利用したり、3つの曲がどう心地よく聞こえるか研究しているような様子で、飽きずに何度も繰り返す。
 つかまり立ちや歩き出しが遅く、発達の遅れが目立つようになり、グレーゾーンになる。

1歳6か月~2歳2か月(発語が確立するまで)
 ルーティンにこだわりを持つため、イレギュラーを除き、発達段階に合わせたおもちゃを与える。条件として光るもの、回るもの、音が鳴るものにこだわるので、3拍子揃っているおもちゃを出来るだけ与える。
 幼児語を一切教えていなかったので、意味のある言葉が「話し言葉」から覚えてしまい、指差しもせず発達検査には引っかかるものの、発語が確立してくると自我を通すこともできるようになった。
 視覚優位を利用して数字パズルを与え、節に乗せて1~10まで数えると覚えて自分で話し、今まで沢山聞いてきていた「きらきらぼし」「ひげじいさん」を声を出して満足するまで歌い続ける。
 童謡が流れるピアノ絵本やメリーで相変わらずを音を流すと、音に合わせてハミングして歌う。
 音楽が流れるとCMでも食いついて踊ってリズムを足踏みでとったり、リトミック的活動を自ら行う。
 自閉症スペクトラムの特徴である、クレーン行動、くるくる回る、手をひらひらさせる、汚れるのが苦手、ルーティンへの異様なこだわりは今もみられるため、3歳健診の確定診断まではまだまだグレーゾーン。
 ピアノは自分で弾きたいと大人の手を退けて、自分だけの音を出すことにこだわる。他の音をシャットアウトしたり、自分の音を聴いていないと怒る。
 新しく覚えさせたいものは、音をのせてリズムをつけて言うと全部覚えてしまうので、特に話し言葉は全部覚えられる。。。

 息子にとって母親が音楽講師だと、一日音楽付けなのかなと思うかもしれないけれど、意外と寝るときは子守唄じゃないし、今なんて無音で真っ暗な寝室に一緒に転がってるだけで寝るし、延々と音楽を聴かせてれば良いだけじゃない。
 特に私はテレビで生放送の音楽番組は見ないし、レッスンという仕事以外では全然CDも聴かない。無音の時間が欲しいと思う。
 息子はテレビもあまり興味なくて、アニメも見ないし、見ても歌だけ聞いて終わり。YouTubeよりも自分の写真をスライドショーしてる方が好き。スマホで音楽を聴くより、本物のピアノを触ってる方が楽しいタイプ。
 でも、ずーっとそればかりじゃなくて、他の自然音にも興味が向いて、キャップがポンっと抜ける音や、うさぎがくしゃみする音にもケラケラ笑ってる。
 興味ある音と興味がない音、その違いであったり、質であったりが聞き分けられる耳を育てることが、音楽好きにするのかなと思う。


 絶対音感を求めて音楽教室に来られる方もいらっしゃるけど、ドレミファソラシが、わかったところで、子どもたちに何が得られるかを考えてほしい。
 音で聞き分けなければならない職人的な技術を求められるなら役に立つかもしれないけど、そうでなければ別にわかったところで面白みはない。
 それより音の質が好みか好みじゃないかを話し合えたら、もう少し心や感情が豊かになれるのではないかと思う。