音楽講師になるには、楽器が弾けること、ある程度の一般教養があることが条件で、特別に資格というと各大手の音楽教室が指定している指導グレードを所持していると、大手の音楽教室所属の講師にはなれます。
これが大きな問題で、実は子どもの発達についてや、子どもの心理学についてはノータッチであることが多いです。また、楽器も弾く技術はあるけど、指導するための話術、専門外の楽器への理解が足りていないこともあります。
私が講師になって数年経った時、自分よりも十数年も上の先輩先生がコード理論や和声法を無視した編曲、指揮法の基礎に乗っ取らない指揮振りを研修指導される、電子楽器の音色の混ぜ方などが「トンデモナイ」酷いレベルで指定してくるなど……「ピアノ講師」って「ピアノ弾く」ことしか見えてないんじゃないかと思った事件があります。
昔と今ではピアノの指導書も随分と変わり、流行りのポピュラー音楽やジャズなども教材に取り入れられていることが多いので、はっきり言えばクラシックピアノだけ弾けていたら良いわけじゃなくなってきています。
もともと、ピアノが習いたかった私ですがひょんなことから電子オルガンから音楽の世界に入ってしまったため、こんなにも知識が増えてしまったけど、全く後悔していません。いや、むしろこの仕事を続けられるのは、電子オルガンを習っていたからじゃないかとさえ思います。
それぐらい現代の音楽講師には、クラシックピアノだけを習っていれば良いかというと全くそうじゃないし、IT化も進んでいるので個人で教室を開くにはインターネットの知識、確定申告などの経理事務の知識も必要です。
適当に流していれば大丈夫な時代は古く、勉強していかない音楽講師は進歩がなく終わってます。
今やyoutubeに、自身の演奏動画をUPするだけで、コンクール入賞を果たしていなくてもピアニストと呼ばれる時代です。リサイタルを開くよりもUPするだけで収益化出来ているなら、効率的な働き方なのかなとすら思えます。
私は左手が小学生の時に腱の近くをカッターでケガしてしまい、指の開きや動きが鈍いため、演奏家としては致命的であるため、指導の道を進むなら自分では機能的にうまく弾けないからこそ知識をフル活用しようと思いました。生徒にこの話をすると左手がうまく動かないと嘆いていた子も、私より左手の開きや動きが良いので「頑張ってみる」と前向きになります。
私の持つハンディキャップが生徒のポジティブ思考に代わるなら、どんどん悪い所も出していって良い演奏に繋がると良いと思っています。
20代で講師をしていた時は、子どもの発達について知識はあったけどアプローチを生かす方法がわかりませんでした。でも、これで良いのか悩んでいたとき、学生時代に実習を受けていた先生や、自分の楽器指導をしていた先生たちとやりとりしていたノートを見返してたんですね。
「あなたは人の話を聞いてくれる雰囲気がある」「笑顔を忘れない」「不思議ちゃんだけど、本当によくここまでついてきたよね」
激励やら、叱咤やら、けなしやら(笑)ありますが、客観的にみると自分がどう映っているのかというのを歴代の先生たちが口をそろえて「しつこい、諦めが悪い、いい変えれば粘り強い」というのです。
それなら、自分の生徒にもそう思われるくらいで接していく方法、発達の勉強、人の心理についての勉強をもっとしようと思いました。パワハラがきっかけでメンタルも病んでしまっていたので、特に精神的な心理学については沢山知識を増やし、そこから私の指導方法や私なりの音楽教育のスタイルが確立されました。
とにかく、一人ひとりと向き合うし、寄り添うし、個人に合わせて人格や口調まで変えてやりきる。
なので、私のレッスンに通っている生徒さんは私という人柄を千差万別に言います。「優しい」「ちょっとドジ」「喋りすぎ」「淡々としている」本当の先生ってどれ? という感じですが、どれも私であって、生徒が興味を引く人物像になれていれば良いなと思う。
そもそも興味を引く人物でなければ、話しは聴いてもらえない。
初対面の体験レッスンで掴むのは難しいかもしれないけれど、知識もなければ話は進まない。
昔所属してた講師会議で配布された文書の音読をする機会があったのだけど、往々にして漢字が読めない講師が多かったのも覚えている。そういったことも経験すると、子どもからは特に「先生」と呼ばれる立場なので、漢字の読みくらいは一般的に知っておきたいよなと思う。どこかの政治家先生も漢字で世間の見る目が変わってしまうくらいだし。
子どもの発達については、保育書がとても役立ちます。保育の先生が使うイラスト集なども、音楽教室のお便りに使えたり、教室飾りに使えたりするし、子どもの発達を知ることで、何故この音がうまく弾けないのか、何故音が読めないのかと知ることが出来る。
そして、発達障害の生徒に当たった場合、本人の年齢での出来ることを見るのではなく、発達に応じてどの年齢のテキストを選べば良いかと逆算することが出来る。
類似で育児書というのもあるが、育児書は理想論がとても多い。というのは全国の親がうなずいてくれると思う。ためになる育児書もあるけれど、百点満点の育児書というのはない。
そういった意味でも普通のお父さんお母さんであっても、育児書を見るのではなく、子どもの発達を間近に触れてみている保育書が断然おススメです。
保育書籍は大きな書店であれば資格受験や、専門書のコーナーに置いてあることが多く、小さな書店では全く置いてないので、出来れば大きな書店で色々見てみるのが良い。
ただ、専門にしている保育士がどこまでこの発達理解をしているか、深く読み込んでいるかというとやはり個人差が大きく、保育士の質・知識量・アウトプット能力は問われる。
知識があってもアウトプットする能力は別物で、わかっているけれど、ついつい子どもを叱ってしまうという母親脳が出てきてしまうからだ。
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